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はじめに
今の日本は飽食の時代といわれています。さまざまな食品に恵まれ,調理済みのものまでも店頭に多く並び,家で作らなくても変化に富んだメニューを食卓に並べることができます。外食産業も盛んです。一方,今,産む世代にある1960年以降に生まれた人々の中には,高度経済成長の中,これまでに祖先が食してこなかったさまざまな食品も多くとり入れながら育ち,簡単,便利,短時間,グルメといったものにられ食事をしてきた人が少なくないでしょう。
食の教育においては,食品の持つ栄養だけに目を向けられ,それを消化,吸収,代謝,排泄する私たちの身体の問題はなおざりにされてきているのではないかと感じます。そのように身体を省みず,日本人に適した伝統食を忘れかけている私たちはどれほど健康でしょうか?“病気”という状態ではないにしろ,身体の冷え,怠感を感じながら,体力,気力に自信がない人が増えているように思います。“呆食”や快適な環境という豊かさの中で,人間としての身体の機能が低下しているような気がします。
栄養は「生物がその生命を保ち,また成長してゆくために,必要な成分を体外の物質からと・り・入・れ・る・こ・と・」(岩波国語辞典)とあります。健康を保つ“栄養”を考える時,食事そのものばかりでなく,と・り・入・れ・る・身・体・を・つ・く・る・生活全般を意識することは不可欠です。
助産院には妊婦さんばかりでなく,思春期の子どもたちから更年期の方まで,見学や健康相談に来院されます。どんな時期にあっても,“栄養”の基本は同じと感じています。健康な女性から,健康な赤ちゃんが生まれ,健康な子どもが育つという視点から本題について当院の活動を紹介したいと思います。
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