特別寄稿
口蓋裂の治療の実際
吉増 秀實
1
1東京医科歯科大学大学院顎顔面外科学分野
pp.66-71
発行日 2003年1月1日
Published Date 2003/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100453
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はじめに
口蓋裂は,上顎(口蓋)に先天的に裂のある疾患であり,顎口腔領域の代表的な先天異常の1つである。口蓋裂には口唇裂を伴うものと伴わないものがある。口唇裂を伴うものを口唇口蓋裂あるいは唇顎口蓋裂といい,口唇裂を伴わないものは,単に口蓋裂,あるいは口蓋の前方部の骨のある部分(硬口蓋部)まで裂の及ぶものを硬軟口蓋裂,硬口蓋には裂はなく,後方部分のみに裂のあるものを軟口蓋裂という。口蓋裂の中には,口腔内に明らかな裂がないにもかかわらず,言葉が鼻に抜ける(開鼻声)などの口蓋裂特有の言語を示す粘膜下口蓋裂や先天性鼻咽腔閉鎖不全症というものもある(写真1)。
成因は,口唇裂や顎裂(歯槽裂)の場合,発生段階にある内側鼻隆起と上顎隆起との癒合不全であり,口蓋裂の場合は口蓋突起の癒合不全と考えられている1)。原因は明らかではなく,一部家族的に多発する場合に関しては遺伝の関与が考えられるものの,多くの場合は孤発例であり,多数の遺伝要因と多数の環境要因の相互作用により,その因子が一定の値(値)を超えたときに口唇裂口蓋裂が発現するといわれている。
口唇裂口蓋裂(口唇裂単独のもの,口蓋裂単独のもの,両者を合併するもの)の本邦における発生頻度は0.182%で,約500人に1人といわれている2)。
本稿では,口蓋裂の医学・歯学的問題点をあげ,それらを解決するために必要な関連各科によるチームアプローチに関して解説する。
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