特集 周産期に子どもを亡くした家族に寄り添う
“悲しみの形”を理解する
岡田 由美子
1
1加古川市民病院小児科
pp.974-976
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100434
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はじめに
周産期に子どもを亡くした家族の悲しみは,さまざまに形を変えてその家族のあり方に影響を与えていきます。家族に新しい命を迎えることは,それまでの家族関係が変化することだからです。たとえ,その新しい命が胎内で亡くなったとしても,生後間もなく逝ったとしても,家族の関係性が変化することには変わりないのです。時間の長短にかかわらず「無かったこと」にせず,命が「存在して」「生きて」「逝った」ことを存分に味わって,その命を加えた新しい家族関係を構築していく歩みを支援することが大切です。
悲しみは「悪」ではありません。人間に本来備わる自然な感情です。新しい命を亡くすことは,「あって欲しくないこと」ですが,その事実を悲しむことで,むしろ次への歩みが可能になります。「悲しみ方」に正解があるわけではありません。家族が「泣かなかったから,心配だ」「泣いて,存分に話せた。あたたかな看取りができた」,どちらもその通りですが,それだけではないのです。
ここでは,筆者(以下,心理士)が出会ったAさん家族の場合を紹介し,“悲しみの形”がさまざまな表れ方をしながら家族に体験されていく過程を考察します。
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