連載 やさしい社会保障 政策はだれのもの?・10
子どものこころなんてわからない
八神 敦雄
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1厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課幼保連推進室
pp.884-886
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100417
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清潔大国ニッポン
サナダ虫のきよみちゃんを体内に飼っている寄生虫学者の藤田紘一郎先生は,日本人の清潔好きがアレルギー蔓延の原因ではないか,と言っている。日本人の30%以上がアトピー,喘息,花粉症などのアレルギーを有しているが,これは回虫を駆除した約30年前から急増してきたという【注1】。科学的な真偽のほどはわからないし,それではみんなお腹の中で回虫を育てよう,などというつもりもないが,子どもを過保護のあまりに清潔な環境で育てすぎると,ひ弱になりそうな気はする。
かつて私が住んでいたマニラでは,下水と見まがうような水溜りで泳ぐ子どもたちや,防毒マスクが欲しくなるような悪臭漂うごみ山の上で生活している子どもたちを見たが,彼らはきっとアレルギー体質ではないと思う(たぶん)。かたや抗菌グッズなるものがあふれるニッポンでは,いったいバイキンたちはどこへ行ったらよいのだろう。いつかバイキンたちの反乱が起きるのではないか。藤田先生は,ウォシュレットが肛門の回りで皮膚を守っているバイキンを退治してしまい,結果的に日本人の肛門を弱くしている,と嘆く。ニッポンは生活大国ならぬ,まさにセイケツ大国(失礼!)である。
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