連載 やさしい社会保障 政策はだれのもの?・12【最終回】
子どもが減ってこれが悪い!
八神 敦雄
pp.1092-1094
発行日 2006年12月1日
Published Date 2006/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100906
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タイタニックの真実
映画「タイタニック」のクライマックスで,傾いて沈没寸前のタイタニック号から,金持ちたちが限られた救命ボートに他人を押しのけて我先にと乗る場面があったが,あれは事実に反するらしい。実際には「女性と子ども優先」の申し合わせは上流階級の間では守られており,一等船室では男性の70%が命を失い,一方で子どもは全員が救助された。女性は144人のうち,自ら夫と行動をともにした5人を除けば全員が助かっている。映画製作者が事実を曲げて描いたのは,悲しいことに,こんな話は今日では誰も信じられない話だからだそうだ。
さて,現代日本の話である。マタニティマークを身につけて通勤中の女性が混雑した列車で立っていたら,すぐ前に座っていた若いカップルが,「妊娠中だったら混んだ電車に乗らなきゃいいのにねぇ」と聞こえよがしにつぶやいたという。いったいどうなっているのか。学校でパソコンや英語や,ましてや株式投資なぞ教えようとする前に,きちんと教えるべきことがあるはずだ。いま若さと元気に満ち溢れ人生を謳歌している若者たちも,もとはといえば母親のお腹にいたのだ。
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