特集 海外を通して見る,日本の産科の医療安全
各国からの報告
④フィンランド―出産の集約化を中心に
谷津 裕子
1
1日本赤十字看護大学
pp.594-599
発行日 2006年7月1日
Published Date 2006/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100358
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はじめに
フィンランドは,日本とほぼ同じ国土面積でありながらその約4分の1が北極圏内にあり,人口密度も日本のわずか20分の1と著しく少ない「森と湖の国」である。1907年,西欧諸国で最初に婦人参政権を認めたほか,男女平等の概念を世界に先駆けて確立したことで有名なこの国における妊娠・出産・育児のサポートシステムは,三砂1)の報告にあるように,驚くほど整然と機能しているが,その一方で,妊娠・出産・産後の継続ケアが展開しにくい点や,医療化された出産が主流となり医療介入が増え続けている点については,母子の安全性と快適性という側面から改善の必要性が指摘されている。
特に,1950年代以降,急速な勢いで「妊娠・産後ケアの地方分散化」と「出産の集約化」を推し進めてきたフィンランド政府が今日抱えている医療安全上の問題は,出産のオープンシステム化に向けて歩み出したわが国が今後直面する課題でもあろう。そこで本稿では,フィンランドの出産の集約化の歴史と現状について調査した結果をふまえつつ,わが国の周産期システムのあり方について考えてみたい。
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