特集 海外を通して見る,日本の産科の医療安全
医療安全対策のこれまでと今後の方向性
藤澤 由和
1
1新潟医療福祉大学社会福祉学科
pp.566-571
発行日 2006年7月1日
Published Date 2006/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100353
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はじめに
1999年11月,アメリカ,Institute of Medicine(IOM)により公表された報告書は,医療行為にかかわるミスが引き起こす重大性を指摘することを通して,人々を救うべき医療が,逆に人々を傷つけている実態を明らかにしたという意味で,大きな衝撃をもって受け入れられた。だが同時に,この報告書が示した実態は,我々が長年にわたって抱き続けてきた「人命にかかわる医療行為は完璧でなければならない」という神話をも崩すものであり,これまでの医療のあり方に根本的な再考をもたらすものであったと言える。
こうした問題提起は,医療といえども人間の行為が介在する組織的行為であり,リスクの遍在性を無視することは不可能である。こうしたリスクに対して医療の場において,どのように対処していくべきかという課題への対応を促すこととなる。
本稿においては,医療における新たなリスクの捉え方に基づく医療安全にかかわるさまざまな施策,方策を概観することを通して,今後の医療安全に関するあり方を検討する。
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