連載 技法=以前・3
当事者と専門家
向谷地 生良
1,2
1浦河べてるの家
2北海道医療大学
pp.89-95
発行日 2007年7月15日
Published Date 2007/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100427
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1 「自分の苦労の主人公になる」
爆発の原因は……
統合失調症をかかえる自称「爆発系」のメンバーから、「向谷地さん、なんだかイライラして爆発しそうだよ」と電話がかかってきた。「そうか、それは大変だなぁ。ところで、キャッチした爆発信号については何か手がかりはあるのかな?」と聞くと、「それをぼくも探しているんだけど、ちょっと見当がつかなくて……」と言う。
そこで、いままでの彼自身の幾多の爆発の経験を踏まえながら、あらためて身近な暮らしを再点検することを提案した。「点検」とは、生活上のさまざまな苦労やエピソードが、自分の体調と気分とどのようにつながっているのかを、絡んだ糸をほぐすように手繰りよせ、突き合わせる作業である。「もう一回、点検してみるよ」と言いながら電話を切った後、しばらくしてふたたび彼から連絡が入った。
「向谷地さん、分かったよ!部屋の生ゴミだったよ。きのうから生ゴミのにおいが気になっていたんだよね。片づけたらすっきりしたよ……」
それを聞いて私は、「爆発しそうだよ」という表向きの深刻さと、「生ゴミがくさかった」という結末のあまりの落差に、2人で大笑いをした。
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