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はじめに
小さな頃から乳房からの授乳の様子を見なれている女性であれば,母親が子どもを抱き母乳を与えている姿を,イメージとして持っているであろう(図1)。しかし,子どもが減り,赤ちゃんと接する機会も少なくなっている現在,母親になる女性が,授乳の仕方に対して具体的なイメージを持つことは難しくなっていると思われる。
このような状況のなかで,お産を終えた母親と赤ちゃんは,共に母乳育児を学んでいくわけだが,適切な授乳の仕方を母親自身が学ぶ意義はいっそう大きくなっていると思われる。
具体的な授乳の仕方は,「ポジショニング(Positioning,抱き方,授乳姿勢)」と「ラッチ・オン(Latch-on,吸着,含ませ方,吸い付かせ方)」という2つの過程に分けて考えられている。
ポジショニングとは,授乳する時の母親,赤ちゃんそれぞれぞれの姿勢と双方の体の向き合い方であり,ラッチ・オンとは実際に乳房を含もうとする時の赤ちゃんの唇や舌の動き,母親が赤ちゃんを自分のほうに引き付ける体の動きなど,一連の動作を指している。適切なポジショニングが,適切なラッチ・オンの基礎となる。
母親が直接授乳している時,それが快適で,十分な母乳が赤ちゃんに移行していたら,専門家が見て少し問題があると感じられるような場合でも,その母と子にとっては適切なポジショニングとラッチ・オンが行なわれている,ということである。同時に,不適切な授乳の仕方は,乳頭や乳房のトラブルの原因となり,また乳汁の赤ちゃんへの移行が妨げられるため,乳汁産生を阻害する原因にもなることも忘れてはならない。
このことをふまえたうえで,実際に母親に授乳の援助をする時のポイントを述べていきたい。
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