- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
近年では、地域包括ケアシステムの構築に向けて地域の保健福祉医療関係者のみならず多様な職種の人々が協働する時代と言われており、協働のあり方や協働における保健師の役割についてさまざまな議論がなされている1)。
県型保健所と市町村の保健師は、従来から保健所管内を単位として協働活動を展開してきた。1994(平成6)年に制定された地域保健法で保健所機能と市町村機能が明確に示され、組織改革や制度改革など社会的背景の変動もあり、保健所と市町村の保健師の協働の様相は変化し続けている。この保健所保健師と市町村保健師の協働や連携そのものに関する調査や研究のほとんどは、特定の対象を取り巻く事象や、災害等の特殊な状況下における保健所保健師の役割等に関する報告2)であり、日常的に行われているさまざまな保健福祉事業や保健師活動を協働活動として調査研究を行った報告は見当たらなかった。
大分県では保健所保健師と市町村保健師の協働関係がうまくいっていると他県の保健師から評価を受けており、この関係を基盤に取り組まれた災害発生時の保健所の市町村支援活動3)や保健師人材育成計画の策定4)の活動報告がなされている。
また、研究者らも実習指導や現任教育を通して保健所管内でさまざまな協働活動を継続的に行っているという印象を持ち、その関係性の中で保健所管内の地区を単位とする地域看護実習が可能となっている。
これらの協働活動は、大分県の保健師にとっては当たり前のこととして行われてきたことであるが故に、具体的な内容は明確な形として残されていなかった。保健所保健師と市町村保健師の協働関係に苦慮している地域もあると聞く中で、この協働活動の実際を具体的に明らかにすることで保健所管内における保健師の協働活動や関係づくりのヒントが得られるのではないかと考えた。そこで、本稿では大分県における県型保健所保健師と管内市町村保健師の協働の実際を具体的に明らかにし、協働のあり方を検討することとした。
Copyright © 2023, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.