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はじめに
2017(平成29)年の人口動態調査1)によると,離婚件数は21万2262件であり,このうち未成年の子どもを持つ件数は約12万3000件で,全体の58.1%を占める。また,全婚姻件数の内「夫妻とも再婚または一方が再婚」の夫婦の割合は26.6%1)である。結婚するカップルのおよそ4組に1組が再婚のカップルであり2),子どもを伴った再婚も多いことが考えられる。
こうした血縁がない背景を持つ家庭は「ステップファミリー」と呼ばれ,さまざまな問題を抱えることが明らかにされている。
例えば,継親,特に継母は,継子の母親代わりになることを期待され,それを自らも遂行しようとすることで高いストレスを経験する3)。継母は,母親役割を十分に果たせていないと感じている者が多く,うつ病の罹患率は非ステップファミリーの母親の約2倍である4)。また,実親は継親との新しいカップル関係と実親子関係の間で板挟みとなり,悩みを抱えることがある5)。
一方,継子は,継親を受け入れることは離婚した実親を裏切ることのように感じ,罪悪感や忠誠心をめぐる葛藤を抱え5),さらに,実親が継親との新しいカップル関係を優先させることに疎外感や孤独感を味わう6-8)と言われている。加えて,継子は初婚家族に比べ,高校・大学進学率が低い9)ことが指摘されており,子どもの成長発達の面においても課題があると言える。
昨今,血縁関係のない親や内縁関係にある者が児童虐待事件の加害者として取り上げられるニュースをよく目にする。ステップファミリーは結婚とともに転居する事例も多く,わが国における2017年度の虐待死事例のうち「転居あり」について,同居していた家族形態は,「実父母」42.0%,「1人親」16.7%,「内縁関係」16.0%,「再婚」10.7%である10)。内縁関係については,後に婚姻する可能性もあり,ステップファミリー予備軍として考えられる。「内縁関係」と「再婚」を合わせると36.7%となり,「実父母」に次いで多い。
中澤11)は,ステップファミリーの虐待の特徴として,身体的虐待と性的虐待が他の類型と比べて多く,加害者としては継父が多いと明らかにしている。また,心理的虐待は全てが継母によるものであり,継子との関係形成の難しさに加え,「良い母親であらねばならない」という自らの意識が継母を追い詰め,虐待に向かわせるという構図を指摘している11)。新たな家族や生活を築いていくステップファミリーには,家族形成の問題に加えてさまざまなストレスがかかるため,虐待のリスクも考慮する必要がある。
以上のように,ステップファミリーは家族構成の変化に伴って,さまざまなリスクを抱えるため,無理のない家族発達の在り方をサポートすることが重要である3)。しかしながら,ステップファミリーへの具体的な支援の内容については明らかにされていない。
そこで,本調査は母子保健事業の中で子育て支援を担う市町村保健師に焦点を当て,養育支援が必要なステップファミリーに行ってきた支援の内容について明らかにすることを目的とした。
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