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はじめに
「全国ひとり親世帯等調査」1,2)によると,父子世帯数は1993(平成5)年度には15万7300世帯であったが,2016(平成28)年度には18万7000世帯に増加している。
父子のみで生活する世帯が年々増加するのに伴い,父子家庭への支援の必要性が認識され3),2010(平成22)年には,児童扶養手当法の改正により,これまで母子家庭のみを対象とした児童扶養手当が父子家庭も受給対象となった。2013(平成25)年には,自立支援教育訓練給付,高等技術訓練,母子家庭就業・自立支援が父子家庭にも適応となり,2014(平成26)年には「母子及び寡婦福祉法」が「母子及び父子並びに寡婦福祉法」へと改称され,「父子福祉資金」制度が創設された。加えて,同年には国民年金法の改正により父子家庭も遺族基礎年金の支給対象となり,母子家庭への支援と同等の施策が講じられている。
このように施策は充実してきているが,父子家庭へは経済的支援だけではなく,育児や家庭生活全般に対する支援が必要3,4)とされている。父子家庭の父親は,母子家庭の母親と比べて正規で雇用されている者が多いが,その分,長時間労働をせざるを得ない3)場合や,子どものことを理由に出張を断れない5)時もあり,必然的に育児参加時間が少なくなる3)。一方,遅刻や早退が多くなるなどの仕事への支障が生じる場合や,仕事への制限が減収につながる4)など,子育てと仕事の狭間での悩みが生じやすい5)。また,子どもの病気の時の対応や,異性である子どもの成長発達に関する知識がないことで生じる悩みもある5)。
このような悩みを抱えているにもかかわらず,「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」2)によれば相談相手がいない父子家庭の父親は44.3%であり,悩みを一人で抱えている父親は少なくない。こういった孤立のしやすさから,父子家庭の場合は虐待リスクが高い6)ことが明らかにされているが,父子家庭への支援内容を明らかにした研究はない。
そこで本調査は,母子保健事業の中で子育て支援を担う7)市町村保健師に焦点を当て,市町村保健師が行う養育支援が必要な父子家庭への支援について明らかにすることを目的とした。
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