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はじめに
2004(平成16)年の精神保健医療福祉の改革ビジョン1)により,「入院医療中心から地域生活中心」の施策が推進されている。2015(平成27)年の病院報告2)によると,精神病床の平均在院日数は274.7日と短縮傾向にあり,地域で暮らす精神障害者が増えていると考えられる。また,2016(平成28)年の国民生活基礎調査3)によると,全国の世帯構造のうち独居世帯の割合は26.9%を占め,微増傾向にある。このことから,独居の精神障害者が増えていることが予測される。
精神科訪問看護サービスの対象者の特性を明らかにした調査4)では,対象者が独居である割合が,訪問看護ステーションでは38.8%,精神科病院の訪問看護では55.4%であり,退院を機に単身生活を始めた人が多く含まれていると考えられている。
この現状に対して,在宅精神障害者の潜在的なニーズを引き出し,プライマリレベルの相談に応じる行政保健師5)が,いかに独居の精神障害者を支援するか,その方策を明らかにすることが重要である。
精神障害者が独居になる背景として,家族が高齢になったこと6)や,家族の負担感が強くなったこと7),家族とのトラブル8)などが挙げられる。独居の統合失調症者は,室内の整理や掃除,金銭管理といった生活に関する課題を抱えている9)。また統合失調症者は,病識の欠如があるため,服薬の継続が困難になる場合がある10)。服薬の継続には家族のサポートが重要となる11)ため,独居の場合,服薬中断の可能性が高まることが考えられる。
このように,独居の統合失調症者は生活や病状管理において困難を抱えているが,その支援を明らかにした調査は,内谷ら6)による1事例の支援プロセスに基づく報告のみである。そこで,本調査は,独居の統合失調症者に対する市町村保健師の支援について明らかにすることを目的とした。
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