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はじめに
NPO法人アレルギーを考える母の会(以下,当会)は,代表の次男が重篤な喘息,アトピー性皮膚炎,食物アレルギー,鼻炎,結膜炎などで苦闘した末に,専門医に出会って劇的に健康を回復した経験をもとに,1999(平成11)年,共に悩んだ母親10人で発足した。患者を適切な医療(標準治療)につなぎ,健康を取り戻してもらう相談活動を中心に,患者も賢く適切な医療を知る学習懇談会や講演会活動,学校や保育所での対応,災害時の支援など患者の相談から浮かぶ社会的な課題を解決するために国や自治体,関連学会などに建設的に働き掛ける活動を継続している。
取り組みの中で,日本アレルギー学会や日本小児アレルギー学会などのアレルギー専門医との連携を深める一方,厚生労働省や文部科学省,消費者庁,内閣府(防災担当)等の担当部門に患者の実情や課題についての情報を届け,意見交換を継続している。こうした連携から内閣府「避難所における良好な生活環境の確保に関する検討会」(2012〔平成24〕年),文部科学省「学校事故対応に関する調査研究有識者会議」(2014〔平成26〕年),厚生労働省「アレルギー疾患対策推進協議会」(2016〔平成28〕年)など,国の検討会等にも当会員が委員として参画している。また日本小児アレルギー学会の「喘息治療・管理ガイドライン」「食物アレルギー診療ガイドライン」の作成委員も拝命している。
当会は相次ぐ災害の被災地でも活動しており,これを継続している。避難生活では,慢性疾患患者が抱える普段は見えない課題が集中して顕在化する傾向がある。当会は患者支援にとどまらず,被災地で患者を支えている自治体の保健師や栄養士,助産師などに,講師となる専門医を同行して研修の機会を提供する協力を続けている。東日本大震災(2011年)の被災地では発災以降114回の研修会に6745人,熊本地震(2016年)の被災地でも10回の研修会に769人の専門職が参加(2019〔平成31〕年2月現在)し,2018(平成30)年の西日本豪雨,北海道胆振東部地震(図1)の被災地でも協力を始めている。
NPO法人アレルギーを考える母の会では,2017年度より市町村保健センターや医療機関,地域の医師会などと連携し,アレルギー専門医や小児アレルギーエデュケーターの協力を得て,アレルギー発症を予防するための「保健指導」の試みを行ってきた。その取り組みを紹介する。
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