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はじめに
2012年の認知症患者数は462万人,つまり65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症に罹患しており(有病率15.0%),2025年には約5人に1人となると推計されている1)。また,2010年の日常生活自立度Ⅱ以上の認知症患者は280万人,うち約半数は居宅による介護が行われている2)。
認知症の介護では,記憶障害や実行機能の障害などの中核症状,徘徊や妄想などの周辺症状(BPSD)のために,家族介護者は精神的・身体的な負荷を負う。新オレンジプランでは介護者支援を中心施策の1つに定めており,心理的ケアも含めた包括的な支援が必要とされている。
認知症の家族介護者は,親族の「その人らしさ」が少しずつ失われていく喪失感や先行きの不透明さによる不安等を抱えている。家族介護者が認知症による家族の変化を受容し,新たな関係性を築く過程をサポートすることは重要である。ロンドン大学では,家族介護者が介護ストレスに対する対処法を学ぶSTrAtegies for RelaTives(START)プログラムを開発し,効果検討を実施した。このプログラムは全8回で,認知症や介護ストレス等に関する心理教育,介護ストレスに対処するためのさまざまな認知行動療法(以下,CBT)のスキルの習得等で構成される。260名の認知症の家族介護者を対象とした大規模ランダム化比較試験では,家族介護者の抑うつ症状やQOLの改善や介入による医療経済効果が報告されている3,4)。
国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センターでは,認知症の家族介護者向けに2つの認知行動療法プログラム(以下, CBTプログラム)を実施している。1つは東京都小平市地域包括支援センター中央センター(基幹型)と協働で行う「家族介護者に対する集団形式のCBTプログラム」,もう1つは東京都立松沢病院や世田谷区内の訪問看護ステーションと行う「訪問看護師が行う簡易型CBTプログラム」(上掲写真)である。その取り組みを紹介する。
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