連載 ナカイタ発 保健師へのつぶやき・54
子ども虐待による死亡・重大事件を一例でも忘れないために,減らしていくために
中板 育美
1
1日本看護協会
pp.1041
発行日 2017年12月10日
Published Date 2017/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664200832
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児童虐待防止法の改正(2007〔平成19〕年)によって,国だけではなく,都道府県,指定都市,児童相談所設置市などにおいても虐待重大事例等の検証を行うことが規定されました。検証の目的は,「事件の事実関係の把握,発生原因の分析等を行ったうえで,必要な再発防止策を検討する」ことであり,言うまでもなく「犯人探し」でも「対応の間違い探し」でもありません。検証は「当該事件に直接関与した者を除いた」学識関係者等で構成する委員によって行われ,検証の対象となった事例に関係する市町村は,これに協力することになっています。
中立性,客観性,第三者性の担保のために,こうした委員構成を取っていることは十分に理解しますが,一方で,当該事例関与者(機関)からの情報提示もやはり重要ではないかと考えています。家族を構成する一人一人の生活史,紡いできた物語は,今,事件となってしまった背景を考える上でも,そして,これからを考える上でも大変重要な情報です。事実確認,受傷機転とともに,その家族の葛藤やSOSを拾い上げることも,検証の一部であり,質の担保につながると言っても過言ではないように思います。
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