調査報告
—奈良県におけるデータ分析を活用した地域診断—経験的ベイズ推定値,GISを用いた疾病集積性の解析
入江 安子
1
,
南 由貴代
2
,
依藤 千明
2
,
山下 延代
2
1奈良県立医科大学医学部看護学科・公衆衛生看護学
2奈良県吉野町保健センター
pp.1032-1039
発行日 2017年12月10日
Published Date 2017/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664200831
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はじめに
保健師は健康増進計画作成において,特定健康診査受診率,国民健康保険レセプトから得られる医療費,健康づくり地域参加者比率,運動習慣者の割合といった健康指標と,死因別標準化死亡比(Standardized Mortality Ratio:SMR)を関連付けて分析し,地域の健康課題を抽出し,その解決の方略を見いだしている。
地域診断の範囲は,都道府県,二次医療圏域,市町村,受け持ち地域など,保健師の活動範囲に応じて多様であるが,多様な範囲に対して同じ分析方法を当てはめてしまい,得られる結果と日常の臨床イメージに齟齬があることも間々あった。
かねてより空間疫学領域では,少数問題(small number problem)1),疾病集積性2)が指摘されている。しかし,この問題が保健師の臨床実践の場で検討されることはほとんど無かったように思われる。1つは概念的理解が進んでいなかったこと,もう1つは空間疫学の知見を取り入れた地域診断を行ってこなかったことがその原因にある。本報告では,保健師による統計解析を少数問題と疾病集積性という視点から再検討し,より精度の高い地域診断の在り方について示唆を得ることを目的とした。
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