特集 「反社会性人格障害者」という人―精神科病院はどこまでやれるのか,やるべきなのか
ある重大事件を起こした人格障害者へのかかわりから―いま私たちが思っていること。そして解けない疑問
大塚 恒子
1
1仁明会病院
pp.26-34
発行日 2003年1月15日
Published Date 2003/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689900537
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事件発生当日,1本の電話が病院に入ってきました。未曾有の阪神淡路大震災が起きたあの未明と同様に,事態が飲み込めず,私たちがどのような状況におかれているのか分かりませんでした。看護部長として,「冷静になろう」と自分に言い聞かせながらも,頭のどこかで,「大変なことになってしまった。病院はどうなっていくのだろうか。長い長いトンネルに入ってもう出られないのではないか」と,不安で押し潰されそうでした。
あれから1年が経過しました。ここで,事件が起こった日からの,「病院がおかれた状況」「職員の心の変遷」や,そのとき「話し合ったことや対策」を経時的に報告いたします。ただし,事例を特定して報告させていただくにはまだ時期として適切でないと思いますので,これまで当院が経験した複数の人格障害者のケアの場面を通して,重大な事件を起こした患者にかかわったことで私たちが学んだこと,人格障害者のケアにおける課題や,渦中にある病院として危機管理について感じたことを報告させていただきます。
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