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はじめに
2012(平成24)年度の児童虐待相談の主な虐待者別構成割合では,実母が6割弱と最も多い1)。母親は最も子どもと一緒にいる時間が長く,核家族化していて祖父母の支援は受けづらい。そのうえ,夫は帰宅時間が20時以降の割合が多く2),多忙な世代であると考えられ,子や母親と向きあう時間が少ない。最近では,地域での交流が希薄化しており,気軽に子育ての先輩である上の世代に相談できる環境ではなく,さらに,母親は同輩(ママ友)に対し遠慮や気遣い,戸惑いが生じており,同輩からのサポートへの期待が低い3)こともある。よって,母親は孤立し,育児負担を抱え込んでいる可能性がある。このようにインフォーマルな資源からの支援が受けづらい状況にある母親を,社会で支えていく必要がある。
櫃本は行政による直接的な介入の充実には限界があり,住民・地域の主体的・独創的活動の支援等,地域レベルの取り組みの促進がキーになる4)と述べている。よって,保健師のような専門職だけでなく,ヘルスプロモーションの観点から,母親を含む地域住民自身でよりよい姿をつくりあげていくべきである5)。さらに,母親への支援は,誰が一番重要なサポート源であるかというよりも,むしろ母親のさまざまなサポートニーズを,母親を取り巻く人々で役割分担し,引き受けていくことが重要である3)ことがわかっている。
また,馬場らの論文において,母親は育児サポートを提供してくれる相手からサポートを受けられると認知したり認識することによって,孤独感軽減の可能性があることが示されている6)。母親が支援を受けて孤独感が軽減したと感じるのは,認知や認識の問題であり,母親の内的な受け取り方によると考えられる。資源側がどんなに支援を提供していると思っていても,母親に届いていなければ,効果的な子育て支援とは言いがたい。
よって,今回の調査では,現在母親が子育てをする中で助けてもらっている人や内容を自由に語ってもらうことで,母親の子育てに関する支援者や支援内容,その評価に関する認知について明らかにし,母親が求めている子育て支援のあり方についての示唆を得ることを目的とする。
なお,本調査では「認知」を“ある事柄を理解していること”とし,母親が語った内容は理解しているものとする。また,「支援」を“人に対して無形の援助を提供することで物理的・精神的・経済的等の生活を支えるもの”とし,「サポート」についても同様とする。
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