調査報告
介護サービスの導入が困難な高齢者にみられる生活上の問題
鈴木 浩子
1
,
平野 康之
2
,
藤田 佳男
3
,
飯島 節
4
1武蔵野大学看護学部
2徳島文理大学保健福祉学部
3目白大学保健医療学部
4筑波大学大学院人間総合科学研究科
pp.620-625
発行日 2011年7月10日
Published Date 2011/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101649
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■要旨
本研究は,何らかの在宅介護サービスが必要であるにもかかわらず,実際の介護サービスの導入が困難な高齢者の「生活上みられる問題」を明らかにすることを目的とした。「介護サービスの導入が困難な高齢者」の事例について,都内A区の保健・福祉専門職に対する自記式質問紙による後方視的事例調査を行った。調査項目は,性別,年齢,主疾患,家族構成など基本的属性のほか,「生活上みられる問題」についての自由記述である。58事例の回答を得,「生活上みられる問題」の内容を質的帰納的に分析した。
その結果,「生活上みられる問題」は,①健康管理上の問題,②精神機能上の問題,③日常生活行為の問題,④生活空間の衛生問題,⑤ADLの問題,⑥介護上の問題,⑦経済的問題,⑧住居設備の問題,⑨近隣住民との摩擦の9つに分類された。9割以上の高齢者に問題が複合してみられ,健康,生活行為,個人衛生など多様な側面でセルフケアまたは保護が不足していた。なかには生命や生活上の安全を脅かす問題をもつ事例も存在した。対象高齢者は,健康や生命,衣食住の基本的生活が危機的状況に陥っていても,自ら問題解決や助けを求めたり,家族から保護を受けたりすることはなく,介護サービスの利用に結びついていなかった。このような高齢者に対する行政の積極的な介入や,高齢者の生活を保障する観点に立った包括的な介入援助が必要と考えられた。
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