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保健指導は,保健師が個々の住民や対象者に提供できる支援のなかで,最も保健師らしい基本的な仕事の1つだと考える。保健師はコミュニティに属する対象集団への支援を得意とする職種である。しかし,個々の人々がもつ健康課題やニーズを鋭敏に把握し支援を提供することに対して,保健師が関心をもたなくなったとき,本当に対象集団のニーズに見合った活動など展開できるのだろうか。また,保健指導や家庭訪問など,個別の人々への支援がそれを専門とする機関に委託されることが多くなった現在,保健師に幅広い視野と力量が真に問われていることはわかるが,実際にはどのように保健指導という仕事をとらえ,取り組んでいけばよいのだろうかと常々考えていた。しかし,本書を読んで,なるほどこのように保健指導を展開していけばよいのかと,明るい展望が見えたように思う。
なぜならば本書は,よく見かける保健指導のノウハウを述べたマニュアル本とは異なるからである。本書では保健指導のスキルアップに関する方法論のみにとどまらず,保健指導というサービスの品質管理をどのように行えばよいかという方略まで述べられている。もう少し具体的にいえば,本書は大きく分けて,①個人が保健指導のスキルをどのように向上させるか,②チームとしての保健指導のスキルをどのように向上させるか,③組織としてサービスの質をどのように管理するか,④保健指導を他機関に委託したときにどのように保健指導の質を管理するか,という内容から構成されている。保健指導の質の担保を保健師等の個々の知識や技術だけに頼るのではなく,組織として質を担保できるシステムをつくることが重要であるという編者らの実績にもとづいた信念が伝わってくる。
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