特集 保健指導再考
一開業個人医院での保健指導
刀根 和子
1
,
下沢 悦子
1
1辻産婦人科小児科医院
pp.842-848
発行日 1981年11月25日
Published Date 1981/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205927
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はじめに
十年ひと昔というが,助産婦学校を卒業して早くもそのひと昔以上が過ぎ去った。そして開業の個人医院に勤務してからでさえ約6年を経ている。何を好んで開業医なんぞの所へ?と疑問のむきも多いと思うが,これがなかなか,助産婦として働きがいのあるおもしろい職場なのである。
学生時代から,助産婦の働き場は地域の中にこそあるのだ,地域に深く入り込んでこそ助産婦としての真価を発揮した仕事ができるのではないか,いわゆる昔からのお産婆さん,開業助産婦の姿こそその姿ではないかという思いがあった。しかし知識も技術も未熟で,経験というものを持たない学校卒業直後の駆け出し助産婦にとって,大病院や大学病院以外に勤務場所を捜すことなど思いもよらなかったし,その術を知るよしもなかった。そして何年かの経験を得るにしたがい,大きな施設大きな組織の中にあって,産科看護婦的な役割しかはたし得ない自分に,学生時代の想いがしだいにふくらみ育っていったのである。しかし数年くらいの経験では開業独立するなどということは所詮無謀としか言えない。助産技術も未熟ならその他の知識も経験も不足,経済的な裏づけはもちろんない。そしてなによりも自信と勇気がない。ましてや出生数が低下し,既存の開業助産婦の存亡さえあやぶまれている時代である。それでは,経験は十分とは言えないが,やる気だけは十二分に持ち合わせた若い助産婦に地域に飛びこむ方法はないのだろうか。
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