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はじめに
近年,わが国をはじめ先進諸国では過栄養と運動不足を背景に虚血性心疾患などの動脈硬化性疾患が急増している。わが国では,2005(平成17)年12月に医療制度改革大網が出され,生活習慣病対策が中長期的な医療費適正化対策の重要な柱のひとつとして位置づけられた1)。生活習慣病対策として,糖尿病等の生活習慣病や動脈硬化性疾患のハイリスク状態であるメタボリックシンドロームの該当者・予備軍を減少させ,保健指導を必要とする者を的確に抽出する目的で,「高齢者の医療の確保に関する法律」にもとづき,2008(平成20)年4月から特定健康診査および特定保健指導の実施が義務づけられることとなった。
特定健康診査の受診者は生活習慣病の発生リスクに応じて「情報提供」「動機づけ支援」「積極的支援」の3つのグループに分けられる。「積極的支援」に該当する対象者に対しては,初回面接で立てた行動目標を実行し続けられるよう,3~6か月の継続支援を行うことになる。この継続支援は面接,電話,メールのいずれかを組み合わせて用いることとされている1)。最近では電話やメールを利用した保健指導に関する研究や,雑誌でITを活用した保健活動の特集が組まれるなど,非対面保健指導への注目が高まっていると考えられる。
老子ら2)は「特定健診・特定保健指導の施行に伴い,健診受診者の生活習慣病のリスクに応じた層別化も求められており,これらの複雑化する健診・保健指導業務を有効で,組織的かつ継続的に運用していくためには,ITの活用および充実は不可欠であると考えられた」と述べている。また,村瀬3)は「これまでは,電話やe-mailといった非対面での指導はあくまでも対面指導の補完,あるいは対面指導へ誘導するための手段との位置づけに過ぎないものでしたが,継続的な指導においては,対面指導と同等とまではいえなくとも,十分有用な指導形態と位置づけられています」と述べている。
私たちは継続支援において非対面指導の有用性が述べられているなか,どのような媒体を用いることが対象者にとって効果的であるか疑問を持った。そこで今回,非対面保健指導について,有効な媒体の活用法を調査し,結果を検証したのでここに報告する。
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