講義ノート 新しい在宅看護論精神看護学
現場から考える在宅看護論
第1章 高齢者の在宅療養のとらえ方
在宅療養のメリット・デメリット
坪倉 繁美
1
1兵庫県立総合衛生学院
pp.963-964
発行日 1996年11月30日
Published Date 1996/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901495
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介護者が加害者とならないために
私が受持ったケースにKさんがいた.Kさんは脳卒中で倒れ,病院で治療を受けたが,後遺症を残し寝たきりに近い状態であった.病院での治療の限界を家族に説明し,在宅療養に踏み切った.Kさんを訪問した時,お嫁さんはこんな話をしてくれた.「主人はおむつの交換などはあまり手伝ってくれませんが,夕食はベッドの側でビールを片手に,おばあさんに食事をさせてくれるので助かります」.この言葉を聞いて,この家族での寝たきり老人の世話の仕方の情景が浮かんでくるようでとても心が温まった.
しかし,必ずしもこのようなほほえましい家族ばかりではない.在宅療養中に具合いが悪くなった場合はだれが責任をとるのか.家族が在宅療養を引き受けることに対し,拒否や緊張を伴う場合もある.また療養者自身よりも,介護者が疲れ切っている場合も少なくない.他の家族員からの介護者へのねぎらいも手助けもない場合は介護者が厳しい状況におかれる.たまにしか見舞わない娘や同居していない嫁は,無責任に好きなことを口出しする.あるいは高齢者による高齢者の介護という例など,家族によって療養者と介護者の関係もさまざまである.
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