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千葉県佐倉市は,聖路加看護大学と協働して,高齢期に入る前の50・60代女性を対象とした近隣他者との交流促進プログラム「未来樹の会」を実施した。プログラム終了後も参加者同士の自発的な交流が続き,住み慣れた地域で近隣同士が気遣い合い,ともに支えあう意識が高まった。健康づくりの一環として「ご近所」の価値を捉えなおし,ご近所づくりの効果的な促進に成功した本プログラムを紹介する。
はじめに
「いくつになっても住み慣れたまちで暮らし続けたい」という希望は誰でももっていると思います。しかし,「年をとってもこのまちで暮らし続けられるのか」という不安も同時に存在するのではないでしょうか。その不安をかき消すために,とにかく高齢になっても自分自身がしっかりしていなければと思う住民の心理と,介護予防重視の政策方針が一致して,いわゆる筋トレや認知症予防などの介護予防事業が盛んに行われています。
いつまでも足腰が丈夫で,物忘れもなく人の手をかりずに生きていきたいという理想を描き,日々トレーニングを積むという考え方だけでは,年を重ねること自体にマイナスの価値を生むおそれがあります。命ある生物である人間にとって,加齢という現象は誰にでも起こる不可逆的変化です。年をとれば誰もが若い頃のようには動けなくなるし,時には周囲や自身の変化に気持ちも落ち込むことだってあるでしょう。認知症や寝たきりのリスクも高まり,周囲の手助けや介護が必要となる事態が起こることも当然です。
加齢という自然の摂理に従って年を重ね,不自由さや喪失感・孤独感・不安感を抱えながらも,住み慣れたまちで住民が支え合い,充足感をもって日々の暮らしを営むことができる地域社会に必要なもの,それは“近隣他者との日常的な交流”ではないでしょうか。
2008年2月から3月にかけて千葉県佐倉市において実施した50・60代の女性のための近隣他者との交流促進プログラム「10年後の私たちの暮らし(未来予想図:未来の樹)を描こう!」,通称「未来樹の会」(佐倉市・聖路加看護大学共同実践研究事業)についてご紹介します。
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