歩いていく日々
樹の繁るように
菅田 恵子
pp.253-254
発行日 1979年4月25日
Published Date 1979/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907330
- 有料閲覧
- 文献概要
幾年か前,私は幼子を肩車にした青年と,河原にさまよい出た.
春だった.鼻をくすぐって,胸の奥に淡い懐かしさと,駆りたてられるようた気持ちにさせる薫風が,肌を洗っていく.堤防のはしっこに腰かけて,何時間も,私たちは話した,さらさらと,軽妙な音をたてて,足元を小川が流れていく.幼子は,マントにくるまって,うとうと眠ってしまった.
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.