特集 高齢者へのリハビリを見直そう もう「リハビリもどき」とは言わせない!
県に求められる視野と取り組み
備酒 伸彦
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1兵庫県但馬県民局但馬長寿の郷事業推進部地域ケア課
pp.874-877
発行日 2004年9月1日
Published Date 2004/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100572
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悲しい思い出
私が理学療法士としてスタートしたのは1983(昭和58)年。当時,「老人病院」と呼ばれた医療機関が,その場所であった。
漫然とした機能訓練を繰り返していた当時の仕事を振り返ると,たくさんの患者さんの顔が思い出され,つらくなる。それよりさらに10年ほど前,夏の暑い日に脳出血を起こして片麻痺となった私の祖母は,何のリハビリを受けることもなく,寝たきりとなって家に帰ってきた。家では,私の母による懸命な“お世話”が1年半にわたって続けられたが,祖母は一度も布団から起きあがることなく,大きな褥創に苦しみながら死んでいった。
いずれも悲しい思い出である。それでも「高齢者リハビリ」について考えるこの小論のはじめには,ぜひ書いておきたかった。介護保険以降,このような悲惨な場面を体験していないケアスタッフが急激に増えていることが,その理由である。脆弱であったわが国の高齢者リハビリや,悲惨な家族介護の時代があったことを知ったうえで,これからの高齢者リハビリとケアを考えてみたい。それを考えることこそが,この特集で私に与えられたテーマ「広域行政機関が,市町村とともに高齢者リハビリやケアに取り組むポイント」になるとも思うわけである。
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