研究室の片隅で・留学生の見たアメリカ・5
葛藤への対応と科学信仰
佐伯 千鶴子
,
中西 睦子
pp.301-304
発行日 1986年4月15日
Published Date 1986/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200883
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葛藤の概念と対処のし方
中西 道徳倫理のクラスでは,いろいろな発見があって,とても面白かった。まず,道徳倫理的判断に関して,心情主義heart-orientedから100%理性主義head-orientedに転換せよという,最初の時間の先生のハッパのかけ方は,鬼気迫るものがありました。その結果が,倫理的葛藤場面に関連する諸条件を全部取り出し,一方,選択可能な行為も全部挙げて,その各々の行為が関連する諸条件のそれぞれについて,プラスの結果をもたらすかマイナスの結果をもたらすかを見積って,最終的にプラスの数が一番多い行為を選び出すという算術計算のマトリックスになって出てくるから,いささか面喰っているんですけれど。まあ,その方法というか,考えていく道筋としては,たとえばアパートを決める時など,私自身すでにやっていることですよね。家賃,交通時間,安全性,清潔,周囲の環境,住人たちの層など,チェック項目をずらりと挙げて,最終的にプラスの多いアパートをとる。これは,アパートを決めたり,車を買うなんていう時にはすっきり納得のいく方法ですが,道徳倫理的判断とアパートや車の選択とが一緒だということになると,どうにも落ち着かない。なぜでしょうね?
佐伯 う一ん,日本の場合はどういうモデルで動いているんでしょうね。
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