特集 医療費を理解する! 保健活動の指標としての効用と留意点を知る
指標としての医療費分析の効用と留意点
岡本 悦司
1
1国立保健医療科学院経営科学部経営管理室
pp.624-627
発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100287
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医療費分析を行う際,その特性として,①正規分布にならない(対数正規分布に近い),②レセプトには多数の疾病が混ざっている,などをおさえておかないといけない。この前提を考えずに分析を行うと…。まずは医療費分析の基本を確認しよう。
レセプトの基本
医療費指標の情報源はレセプト(診療報酬明細書)である。レセプトは医療機関から保険者(市町村,保険組合など)に提出される請求書であり,受療の記録である。したがって,医療機関を受療していない潜在的な医療ニードは把握できない。たとえば,糖尿病のような生活習慣病では,現に受療している患者のほかに,放置されている有病者が相当数いるが,そうした潜在的なニードはレセプトでは把握できない。同様に,どんなに有病者が多くても,受療できなければレセプトにはあらわれない。「無医地区はどんなに病人があふれても医療費ゼロ」なのである。
レセプトの基本情報は,件数,日数そして点数(医療費)である。件数を被保険者数で割った指標を受診率とよび,これと1件あたり日数,そして1日あたり点数の3指標を医療費の3要素とよぶ。これら3指標の積が,1人あたり医療費となる。1人あたり医療費が,患者負担と保険料負担に直結する。件数は,旧総合病院の外来の場合,診療科ごとにレセプトが作成されるので,同じ1人の患者が複数の診療科を受診した場合には,患者数が同じでもレセプト件数が増えることがある。それゆえ,旧総合病院をかかえる地域とそうでない地域の受診率を比較する場合には,注意が必要となる。
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