連載 ニュースウォーク・90
出生率1.29のじゅ縛
白井 正夫
1
1元朝日新聞
pp.886-887
発行日 2005年9月1日
Published Date 2005/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100214
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仕事上で付き合いのあった男性が10年勤めた会社を辞めて転職すると聞き,夏の一夜,激励を兼ねて横浜で「まあ一杯」となった。30代前半,妻に幼な子1人。先輩面して「小さい子がいるのに大丈夫か」と案じたら,「2人目が年末に生まれるのですよ」とさらりと言われてしまった。
話題は少子化社会の行く末,育児支援に広がり,子育ての大変さがマスコミで取り上げられていることに及ぶと,やがて2児の父親になる男がこんなことを言った。「児童手当だ,保育料補助だと育児支援はありがたいけど,それだけが騒がれると,若い世代の人は出産,育児は大変だと本当に思ってしまい,マイナス効果ではないですか」。思いがけない言葉に,うーん,とうなってしまった。「大変だ」合唱が,若い人たちに強迫観念を植えつけ,少子化現象を再生産しているのではないかという疑問である。
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