連載 BOOKS
―「時間の止まった家「要介護」の現場から」関なおみ/著―異様な光景の奥にある,その人の事情とは…。
石川 貴美子
1
1神奈川県秦野市健康福祉部市民健康課
pp.890
発行日 2005年9月1日
Published Date 2005/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100215
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
少し経験のある保健師なら,訪問先で出会った人に驚かされたり,感動をもらった経験があるはずです。本書には,著者が医師として基幹型在宅介護支援センターに勤務し,訪問先で感じたありのままの驚きがつづられています。著者のカメラの腕前を発揮して撮影された,カラーよりもリアルな白黒写真は,訪問先の部屋のすごい様子を赤裸々に伝えてくれます。
著者は,訪問先で驚いた数々の光景を,本書のタイトルである「時間の止まった家」と表現しています。都心にもかかわらず「便器も床もないトイレ」「白いひげや髪の毛のなかで動き回っているたくさんのコロモジラミ」「押入れのなかに積もる猫の糞」…。たしかに,掃除や洗濯といった日常生活での快適さを求める行為とはまったく無縁の廃虚のような空間は,携帯電話やパソコンを駆使して時間に追われた毎日を過ごしている私たちからは,まるで時間が止まっているかのようにも感じます。けれど,そこに住む人にとっては,そこが自分の大切な居場所なのです。
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.