連載 保健師と精神科医との往復書簡・11
適切な自己開示の時期ってありますか?
ひらす けい
,
S
pp.164-169
発行日 2006年2月1日
Published Date 2006/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100048
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がん患者として生きる保健師と,地域精神保健活動への助言者である精神科医との間で交わされる往復書簡。援助者としてと同時に患者として,さざなみのように揺れる援助の姿に本物を求める保健師と,援助の検証を深める精神科医との対話から,多くの教訓が引き出されていきます。
S先生
拝啓
秋の気配が濃厚になってきたある夜,その闇の変化を確かめるために天空を見上げると,そこでは満月が森の周りの家々をぼんやりと浮き上がらせていました。その夜,私の目に入った月は,かつて天界の真ん中で見せていたような透明なレモン色の輝きを失い,くすんだみかん色に近い姿を空と山との境界付近であらわにしていました。絵のない絵本の月は今も世界中を巡って人々の生活を目に焼きつけているのだろうな,でも19世紀から随分変貌した世界の街の夜景に戸惑い,暮らしも生き方も大きく変わってきた人々の心にどんな入り方をすればいいのか悩むことも多いだろうな,などといらぬ想像をめぐらせてしまいました。
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