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1980年代の医療と看護のかかわりあい
日野原 重明
1
1聖路加看護大学
pp.310-318
発行日 1982年5月25日
Published Date 1982/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907683
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はじめに
私は戦前から約40年間もの間,看護教育に参与しています.太平洋戦争直後の看護の教科書のない時代には,看護の教科書として解剖生理学・薬理学・医学概論・臨床検査,そして内科に関する教科書などを今日まで書いてきました.1949(昭和24)年に解剖生理の本を出版したときに,‘何年経ったらナースのテキストを医師が書かなくてもすむような時代になるだろうか.今はやむなく私が書くけれども,将来は看護の指導者によってこのようなテキストは書かれなくてはならない’と申しました.そのようなとき,今から30年前に既にアメリカ合衆国(以下‘アメリカ’)ではそのような本がナースによって書かれていました.
アメリカでは,看護学のテキストに医師はアドバイザーとして参与し,本の実質的内容はすべて看護教育の指導者によって書かれてきました.私が30年余り前に書いた解剖生理や薬理の本を書くナースは,今日まで現れていません.しかしほかの看護学に関する本は,過去15年くらいの間に看護の指導者によって,かなり多く書かれるようになってきました.しかし,いまだに看護学に関連のあるサイエンスの多くの部分が看護婦でない専門職によって指導されているという現実をみると,日本の看護教育は看護の進んだアメリカ,英国,カナダにおける現状とはまだまだ離れていると感ぜざるをえません.
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