特集 感染病の国際的動向とその対策
1980年代における感染症の国際的動向予測とその対策
北村 敬
1
1国立予防衛生研究所痘そうウイルス室
pp.836-847
発行日 1979年12月15日
Published Date 1979/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205976
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■はじめに
1970年代の10年間は,世界における感染症の状況に根本的な変化が起こった時代として,歴史に残るであろう.WHO(世界保健機構)をはじめとする種々な国際協力により,古来,医学の中心課題であった多くの感染症が多くの文明国において事実上根絶され,1980年代には,これを発展途上国に広げ,世界的規模での制圧ないし根絶に持って行くのが主な目標となるものと考えられている.特にWHOの全世界痘瘡根絶計画は1967年の発足以来,予定通り10年間で,1977年にその目標を達成し,2年間の観察期間をおいて1979年,その確認が行なわれたことは周知の通りである.これは疫学理論に忠実に,全世界が協力して達成された輝かしい成果であるといえよう.
その反面,人口動態と交通様式の変化により,従来,地球上の僻地で,人畜共通伝染症として存在しているものと思われるいくつかの疾患が大流行を起こして,新たにヒト―ヒトの感染環を形成する可能性も生じ,新しい国際伝染症が生まれるという新しい事態も見られる.また,診断方法の進歩により,従来感染症と考えられなかったような疾患で感染症であることの証明されたものもある.
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