‘学ぶ’とは何か

教育の概念

　前回，やや僭越ながら筆者の足跡にふれながら，本連載に取り組む私の立場にふれておいた．それは要するに，教育を，教育において示される人間の現実から理解しようとし，他方では，人間を教育の相のもとに考察しようということであった．つまり，教育を人間から理解すること，また逆に人間を教育から理解していくことを目指そうということであった．

　しかしこの探求をすすめるにあたって，われわれの‘教育’という概念への理解の不十分さが障害となる恐れがあるので，いましばらくの迂路をお許しいただいて，この点にふれておきたい．とはいっても，論をすすめるに必要な限りにという意味であって，厳密な教科書ふうのそれではないこともお断りしておかねばならない．