特集 女性のアイデンティティと出産
ある事例から学ぶ──母性に対する援助とは何か
中重 喜代子
1
1東京女子医大看護短大
pp.586-590
発行日 1980年9月25日
Published Date 1980/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205756
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はじめに
昭和55年4月24日,S病院で臨床実習中であった我々(短大3年生・母性看護学),は救急車で運ばれてきた1人の初産婦を迎えた。
朝の申し送りによると,本人の話では前日の朝血性分泌あり,今朝3時半頃急に陣痛が強くなったので,驚いて救急車を呼び入院してきたとのことで,週数は最終月経からの計算によると,38週6日であった。これまで,いろいろな事情による救急入院を経験してはいたが,我々を驚かせたのは,妊娠中1回も診察を受けたことがなく,また入院の準備も何ひとつないまま,着替えも持たずに1人で入院してきたということであった。
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