連載 臨床実践
今日からのリスクマネジメント実践講座(トピックス編)・8
「患者取り違え事故」をふりかえる—そして半年—何を学び,何に取り組んだのか
鮎澤 純子
1
1東京海上メディカルサービス株式会社メディカルリスクマネジメント室
pp.774-780
発行日 1999年8月1日
Published Date 1999/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661905908
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事故事例をどう生かしていくかの視点で
1999年1月11日に横浜市立大学医学部附属病院で「患者取り違え事故」がおきてから,半年がたちました.その間,横浜市長の委嘱に基づく「横浜市立大学医学部附属病院の医療事故に関する事故調査委員会」の報告書(1999年3月/以下,「委員会報告書」とする)や厚生科学研究の一環として設置された「患者誤認事故予防のための院内管理体制の確立方策に関する検討会」の報告書(1999年5月12日/以下,「検討会報告辞」とする)が発表され,また日本看護協会は「リスクマネジメント検討委員会」を設置し,6月18日現在リスクマネジメントガイドライン発表の準備にかかっておられます.
1つの医療事故について,これだけその詳細が明らかにされたこと,事故の原因や再発防止策についていろいろな立場から多くの発言があったことはほとんど例がないことです.しかし何より,いま多くの組織でより大きな視点からの事故防止活動が始まっているという点において,この「患者取り違え事故」という医療の質に対する信頼を揺るがした事故が,あらたな医療の質の確保に向けての取り組みにもたらした意義は,小さくありません.そしてもちろんその取り組みを支えているのが,事故の教訓を無駄にしてはいけないという,医療の現場の覚悟です.
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