看護研修学校特殊研究・4
看護における人間対人間の関係の確立を目指して—真実を知らされていない癌疾患患者とのかかわりを避けていた私について
西山 律子
1
1日本看護協会看護研修学校
pp.639-646
発行日 1979年10月25日
Published Date 1979/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907379
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はじめに
私が看護婦として勤務していた外科病棟へ入院してきた患者の約3分の2が,癌疾患患者であった.根治術あるいは姑息術を受け,退院していった患者もあったが,なかには癌の侵襲が強く,手術が不可能であったり,癌の再発のために再入院し,そのまま軽快して退院するまでには至らず,病院で死を迎えた患者もいた.
私が特に看護の困難さを痛感したのは,後者の経過をとる患者であった.このような患者に対しては,正確な診断名や死の時期が直前に迫っていることなどの真実は知らされていない.しかし患者の中には,治療を受けていても自分の体から治癒傾向が見いだせないことから,‘悪い病気ではないでしょうか?’‘本当に治るのだろうか?’と疑惑に満ちた質問を医療従事者に問いかけたり,患者をとりまく人々の言動に,患者の持っているあらゆる知識を照合し,さまざまに反応している患者もいた.
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