時評
人権意識が問われる「知らされた上の同意」
宮森 正
1
Tadashi MIYAMORI
1
1川崎市立三田病院
pp.987
発行日 1988年11月1日
Published Date 1988/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209423
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「患者サービスの向上」の一環として,インフォームド・コンセント「知らされた上の同意」が提唱されているが,理念的にも現実的にも,問題はそう簡単なものではないようだ.無作為化臨床試験を必要とする臨床研究や,医療技術の進歩の中でどのようにして個々の患者の人権を守るのかという問いから出発したものであるだけに,事はサービス云々と言った生易しい問題ではない.
医療側にとっても患者の側にとっても,侵すべからざる「人権」というものに対するお互いの態度を,「知らせる」「同意する」という形で明白に表明しなければならないというのっぴきならぬ状況に置かれることになる.それは良く言えば信頼関係の成り立った患者—医師関係,多くの場合は互いに言わなくても分かり合っているはずの甘え合いの関係を清算して,いわば欧米流の冷厳とした人間関係を構築しなければならない苦しさを味わうことにもなる.これは日本的風土にドップリと漬かった者にとっては辛い選択である.
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