私の病棟日誌・9
隔たりの上の医療
曰下 隼人
1
1武蔵野赤十字病院小児科
pp.126-128
発行日 1978年2月25日
Published Date 1978/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907185
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
患者から遠ざかりつつある医療
子供の自殺が増えている,と新聞で報じられても,そこは世の常で,私も遠くの出来事のようにしか思っていなかったのだけれど,現実にそういう子供が私どもの病院へ運ばれてきてICUに入院し,当直の間ずっと診なければならないことになると,何とも複雑な気分になるものだ.
もっとも,今回ここで自殺に関する社会時評をしようとしているわけではない.むしろその子を見ていて,無責任にもとでも言おらか,私は自殺に限らず今日‘死’は決して美しくないし,まして病院に連れこまれたら最後,美しくなど死ねないなと考えていた.それは過日,1人の女性が駅のホームから電車が入ってくる寸前の線路に誤って転落し,間一髪助かったところを見たという,私の体験とも重なりあったからでもあった.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.