教育の眼
歴史をどう学ぶか
佐藤 忠男
pp.421-425
発行日 1974年6月25日
Published Date 1974/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906785
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“労働時間”(藤本武)という本を読んで,びっくりしたことがある.それは,昔の村落社会においては,だいたいにおいて,労働時間は1日8時間ぐらいのものであったらしいと書かれていたからである.1日の労働時間がそうだっただけでなく,昔の村落社会においては,なにかとお祭の日が多かったために,1年間を通じると,けっこう,今日の日曜祭日を合わせたぐらいの休日があったようだと書かれていたからである.
これを読んで私は,あっとばかりに驚いたわけだが,それというのも,私は,科学が発達すればするほど,人間の労働時間というものは短くなってゆくものだとばかり思い込んでいたからである.それが錯覚にすぎないことは,考えてみれば,べつにこの本を読まなくても,現代だって低開発諸国の農民が1日何時間ぐらい働き,年間にどれくらい休日をとっているかを調べればすぐに分かることである.
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