扉
歴史に学び,原点に帰ろう
藤井 清孝
1
Kiyotaka FUJII
1
1北里大学病院
pp.3-4
発行日 2011年1月10日
Published Date 2011/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101315
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政治・経済での日本の混乱,凋落ぶりが著しい.中国,インドをはじめとする経済新興国の台頭,リーマンショックによる世界金融信用破綻などで,第二次世界大戦後長期にわたり日本政府がとってきた米国追従型の政治・経済政策が,問題解決に役立たなくなってきた.最近20年にわたり,デフレスパイラルの悪循環から脱却できず,財政と金融政策で有効な手立てが打てない歴代政府や日銀の判断と政策実行能力の低さが際立っている.先進国中で日本経済のみが停滞し,米国をはじめとする各国より憐みの目で見られ,日本の二の舞だけは避けようといった何ともやりきれない状況が続いている.2000年初頭の小泉内閣時代はすべての領域で聖域なき財政再建を目指したが,医療・年金・社会保障の分野で破綻を来し,さらに企業は人件費切り詰め策として非正規雇用制度を積極的に採用したため,貧困格差という社会問題を生じてしまった.国家予算は財政再建を目指しながらも,景気低迷・税収の減少で過度の国債発行に依存せざるを得ず,未だプライマリーバランスを回復できないなど,借金大国の危うい状態が続いている.このまま国の借金が増え続け,国としての明確なビジョンの提示と適切な政策が実行されなければ,2020年頃にはギリシャのように国家の破産が起こるのではないかと恐れられている.これらの責任は政策立案・実行能力に乏しい政府と現実を直視せず省益に走る硬直化した官僚組織の責に帰するところが多いが,国民やマスコミの側にも大いなる責任があるように思う.
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