私の発言
大学制度の看護教育—看護学確立のために
菊井 和子
1
1川崎医療技術短期大学看護科
pp.305-310
発行日 1974年5月25日
Published Date 1974/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906772
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大学教育への疑問
大学あるいは短期大学で看護教育を行っていると,時にそのレベルが各種学校のそれより低い場合もあるのではないか,ということが話題になる.それは,各種学校ではあったが伝統もあり実績もある看護学校も数多くあって,短大や大学に劣らない高い教育レベルを保ってきたという意味で結構な話かもしれないが,やはり,やっと正統な日本の教育制度にのった大学・短大課程であれば,これは簡単に聞き流してしまう訳にもいかない.もちろん,日本のリーダー的な学校群ではそんな心配もないだろうが,最近のようにあちこちに新設の大学・短大群が誕生し始めると,時には‘さてあれで?’という声が聞かれるような訳であろう.
今日,看護教育がそのあるべき姿として大学教育を目指すという事は,なかば常識であるが,それが常識として固定したのはそう古い話ではない.わずか十数年前には,大学出の看護婦はむしろ懐疑の目で看護界に迎えられたものである.特に東大衛生看護科に対しては,医学界も看護界もその教育に対して厳しい批判の目を注いだものである.東大衛看の卒業生が看護活動を始めて約10年を経て,やつとその価値が認識されてきた今日でも,例えばキャップと白衣をつけずに実習に出たとか,卒業生が注射もできなかったというエピソードは,揶揄的に語られるだけで,どこの短大も大学もまねようとしてはいないようである.
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