今月の言葉
助産婦制度の確立を要望する
谷口 弥三郎
1,2
1参議院
2久留米大学
pp.7
発行日 1962年3月1日
Published Date 1962/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202285
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私は,すでに久しい間,わが国の実情に即応した助産婦制度をすみやかに確立するため,現行制度改善の必要性と,その急務なる所以を強調してきたのであるが,今日もなお,依然として助産婦の社会的職能が確立されず,その志望者も逐年減少し,医療面にも重大な影響を招来している事実は,まことに遺憾である.
わが国の妊産婦死亡率は,ここ数年来,下降の傾向をたどつているとはいえ,いまだ欧米諸国にくらべてかなり高率である.昭和34年,35年にわたる厚生科学研究費による「妊産婦死亡原因の追及に関する研究」の結論としても,妊産婦対策を強化することによつて,その約60%が死亡をさけうると示唆した.また,昨年11月東京に開催された母性衛生学会においては,妊産婦死亡の80%までは医療態勢の悪い時間に現われていると報告されている.ことに全新生児死亡中,未熟児が実に60%を占める現状においては,その国家的対策を一段と強化することの必要性と急務なることが痛感させられる.
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