教育の眼
屈辱社会と教育
佐藤 忠男
pp.60-64
発行日 1973年1月25日
Published Date 1973/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906650
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今井正監督の映画‘海軍特別年少兵’を見た.海軍特別年少兵というのは,太平洋戦争の末期に海軍が募集した志願兵の一種で,小学校の高等科を卒業したばかりの14歳以上16歳未満の少年を海兵団に入団させ,1年半ぐらいの訓練ののち,水兵や整備兵として前線に出したものである.そして,その多くは,実際に16,17歳ぐらいで,硫黄島その他の戦線に配属されて戦死したのである.
私は,やはり14歳のときに,海軍の少年飛行兵を志願して入隊した経験があるので,この映画には特別に関心を持った.私の場合は,入隊後3か月で敗戦になり,実戦に参加することはなかったから,たいして深刻な体験とも言えないが,それでも,その3か月の少年兵生活は,軍隊というものがいかに恐るべき教育機関であったかということを,骨身に徹して知らされた経験として残っており,その後,私が,教育とか人間形成とかいうことを考えるときの反省の原点になっている.そのために私は,この映画が,私の体験したこととどこまで一致しているか,いないか,また,そこからどういう意味を見い出しているか,ということに,特に強い関心を持ったのである.
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