教育の眼
映画教育の提案
佐藤 忠男
pp.751-755
発行日 1973年11月25日
Published Date 1973/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906728
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現代は視聴覚文化の時代であるといわれ,文章の読み方と同じように,映画やテレビの見方の教育が必要だといわれはじめている.学校では,小説や詩や戯曲を読ませて,文章の読み方を教えている.同じようにして,映像の見方も教える必要はないか,というのである.しかし,映像の見方とはいったいなんだろう.映画理論のことだろうか.しかし,残念ながら,映画理論というものはまだ専門家の間でさえ,これこそは万人の納得できる理論体系だといわれるようなものはないのである.一般的にいちばん有名なエイゼンシュタインのモンタージュ理論にしたところで,非常に疑問の多い,また,実際的な影響力はさほど大きくないものでしかない.もっとも,そのことは映画の恥ではない.長い歴史を持つ文学にだって,万人の納得する理論などというものはないのである.
私は映画やテレビの見方を教えるのであったらこのすぐれた作品を選んで見せるということで十分であると思う.見たうえで,生徒同士,あるいは教師と生徒とで話し合う.要望があればそれについての専門家の研究や批判を参考に読むのもよいだろう.ただ,まちがっても,その見方について試験そして点をつけるというようなことはしてはならない.そしてこの原則さえ守られるならば,私は,学校やそれに準ずる施設で,課外活動として,よい映画,よいテレビ番組を選んで見せることに賛成である.そういう活動は,諸外国では既にかなり活発に行われている.
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