連載 社会思想史の旅・7
フランス革命と啓蒙思想
田村 秀夫
1
1中央大学経済学部
pp.37-41
発行日 1969年5月1日
Published Date 1969/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906175
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レマン湖のほとり
風光明美なスイスの代表的な都市ジュネーヴは,遠くアルプスを望む湖と公園の町として観光客に親しまれているが,この町はまた,フランス革命に大きな思想的影響を与えたジャン・ジャック・ルソー(1721〜1774)の故郷でもある。1712年6月28日,ルソーは,この町のグラン・リュで生まれ,1718年に下町のサン・ジェルヴェ区クースタンス街に移っている。のちに彼はジュネーヴについて「確実なことは,この都市が私には世界中でいちばん魅力ある都市のひとつに思え,またその住民が,私の知っているいちばん賢明で幸福な人間に思える,ということです」と,デュパン夫人にあてて書いている。
これは彼が『人間不平等起源論』を完成し,「ジュネーヴ共和国への献辞」を書こうとしているころのことである。「ひとにぎりの強者や富者が,権勢と幸福の絶頂に立っているのに,大多数のものが無知と貧困のなかに這いまわっている」状態の起源を追求したこの作品は,懸賞論文としては落選したが,『社会契約論』とともに,フランス革命の自由と平等の理念に深い影響力をしめすことになる。
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