連載 精神科診療の見立てと精神療法を,改めて考えてみよう
啓蒙思想,ロマン主義とドイツ精神医学②―デカルトと科学革命(上)
原田 誠一
1
,
神田橋 條治
2
,
中尾 智博
3
,
高木 俊介
4
,
岸本 寛史
5
,
滝上 紘之
6
,
八木 剛平
7
1原田メンタルクリニック・東京認知行動療法研究所
2伊敷病院
3九州大学大学院医学研究院 精神病態医学
4たかぎクリニック
5静岡県立総合病院
6應義塾大学医学部精神・神経科
7翠星ヒーリングセンター
pp.85-97
発行日 2025年2月5日
Published Date 2025/2/5
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
前回,啓蒙思想と科学革命の関係を概観したが,今回は科学革命とデカルトの関連に焦点を当てることにする。先ずは,前回からたびたび引用を行っている山本義隆の文章(山本,2021)を紹介しよう。
ここに見られる山本の記述,「遠隔力の問題は,物理学の課題を実験と観測によって確証され数学的に表現される法則の確立に限定し,それ以上に事物の本質を目指さない,つまり本質論を放棄するという,近代物理学の自己限定へと発展してゆきます」は,そのまま本連載の主要テーマの一つに直結する。つまり,こうした「本質論を放棄するという形で自己限定を行っている近代物理学」を基盤に置いてきた現代の自然科学が精神医学,精神医療,精神療法に対して有している重要な意味合いと,そこに内在する本質的な限定,限界がこの一文に示唆されていると思う。今回はこのテーマと,山本の文章の中に2回出てくるデカルトに焦点を当てることにする。次節で,今回デカルトを扱う理由に触れてみよう。
Copyright© 2025 Kongo Shuppan All rights reserved.