教育のひろば
看護職の尊厳(とうとさ)
溝上 茂夫
1
1富山大学教育学
pp.1
発行日 1968年2月1日
Published Date 1968/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905969
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ひるがえってみますと,摂理は,このわたくしを,幾十年と,教育学の教授として,わが国の教育職養成教育に従事させたことになります。その間,いくたびも小学校や幼稚園の教育にもしたがってまいりました。わたくしの奥深いところには,いつも児童や幼児の友という自覚があり,これがわたくしの生きがいとも,幸福ともなっていると思います。
ちかごろ,「望ましき人間像」ということがとなえられます。いかにも,人間形成(Menschen bildung)といわれる教育は。望ましき人間像(Menschen-bild)を心に描くことなしにできるものではありません。ところが,実際問題として,それは,抽象的な理論体系や,観念的な,人間諸要素の羅列(られつ)では,いきいきした教育活動の力の源泉とはなり得ません。結局,若いひとびとの本格的なお手本(Vorbild)あるいは原像(Urbild)は,歴史上にあらわれた具体的な人物がいちばん適切であって,文字通りの人間像とは,このように心から敬愛思慕するイメージ,あるいはビルトのことではないでしょうか。
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