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医学からみた個の尊厳
渋沢 喜守雄
1
1前群馬大学
pp.67-68
発行日 1963年7月10日
Published Date 1963/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202886
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天は人の上に人を作ならいそうです.また,すべての人は法の前に平等だそうです.私は憲法や人道主義を,ここでみなさんにお説教しようというのではありません.医学から見て,個体は全く独立不可侵の尊厳なものであることを,ヒシヒシと痛感するので,医学から見た個体の尊厳を話題にしたいと思うのです.
どんな人にも血液型というのがあります.A型とかB型とかいうあれです.A型の人には絶対にB型の血液は不向きです.つまり,不適合です.血液型はたいへん細かくわかれてきまして,新聞などにもときどき出るRh型とかMN型とかKとかLeとか,いやもう実にウンザリするほどの型が知られてきたのであります.同じA型の2人の人があっても,その細かい分析をすると,どこかにちがいがあるのがわかったりいたします.そうした細かい構造のちがいでも,実は不適合なので,そうした血液をやったりもらったりすると,輸血の副反応が起こります.さらに白血球にも型といっては言葉が適切でないかもしれませんが,不適合というのがあります.白血球が不適合だと,その輸血でつよい発熱反応を呈してきます.また,血小板にも似たようなことがあります.そうしてみますと,人は血液という点から見ても,かなり千差万別で,すべてが全く同じというのは,あまり居ないということになります.
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